無料オンラインゲーム『百花繚乱Endless Battle』。 そのノベライズとそれに関することを書いていきたいと思います。

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第65話『必然性への疑問』

「ここも特に無し、か」

部屋の中を確認してから犬彦先生は呟いた。

「これでこのフロアは全て調べましたよ」

「あぁ・・・妙だな」

目白の報告を聞き、犬彦先生は返答した。

「ですね、ここまで調べて何も出てこないなんて・・・」

新橋もそれに同意した。

今回、何かあると言われたために調査が行われている。

しかし、それで1フロア全て探しても何もない。

おかしいのは明らかだった。

そんな状況に

「・・・・・」

池袋はただ、無言で周りを見渡すだけだった。

「とにかく、次のフロアに行くぞ。早く終わらせなきゃあの2人が・・・」

そこまで犬彦先生は口を止めた。

「・・・来たな」

「え?」

すると犬彦先生の視線の先に、武装した異星人と思わしき人型の物体が角を曲がって現れた。

「クッ!」

それを見た新橋は武器を具現化させようと手を前に出した。

ところが、その手を強制的に下ろされる形で犬彦先生に止められた。

「え?」

「ここは任せろ、お前達は調査を続けるんだ」

「・・・わ、分かりました、お願いします!」

先生からの指示には素直に従おうと判断した目白は、3人を引き連れて上のフロアへと向かった。

「さて・・・理解できないだろうが、一応言っておく」

そう言った後、武器を具現化させ、再び口を開いた。

「俺は一切、手加減できないぞ・・・!」



「このフロアも何もないわね・・・」

「えぇ・・・」

上のフロアに来た3人は、早足ながらも調査を終えていた。

それでも、何もないと断言出来るほど、このフロアには何もなかった。

その様子に違和感を感じる2人に対し、

「・・・・・」

池袋は相変わらず無反応であった。

するとその時であった。

どこからともなく、大量の足音が3人の耳に聞こえてきた。

「・・・来たな」

「あぁ」

いち早く反応した池袋と新橋はすぐさまその方向に構えた。

「目白さん、ここは俺達がやりま・・・」

「いや、お前も下がってろ」

そう言って池袋は前に出た。

「な!?」

「お前の得物じゃ、ここだと振り回せないだろ?」

この池袋の指摘に、新橋は反論出来なかった。

3人がいる、この狭い通路では『蒼天の剣』は大きすぎるため、その性質を生かしきれない場所であった。

「その点、俺のコイツなら・・・」

池袋はそう言った後、武器を具現化させた。

形からはとても武器とはいえない、『自由の代償』を。

それを具現化させた次の瞬間、下に現れたのと同じ異星人たちが現れた。

数にしては、先ほどよりも若干多い。

しかし池袋はそれに臆することなく、

「こういう場所向きだ!」

言いかけていた言葉を全て吐き出した後、『自由の代償』を投げ飛ばした。

『自由の代償』はそのまま壁に何度もぶつかりながら敵に向かっていき、激突。

だが、それだけでは済まなかった。

その後も『自由の代償』は上下左右に何度も動いて壁、天井、床にぶつかって敵に襲い掛かった。

そして、その度にそれらはことごとく砕かれていった。

「お、おい、壊していいのか!?」

新橋がそんな光景を見て聞いたが、当の本人は全く聞いていないようだ。

「大丈夫よ、ちゃんとそこら辺は確認とって、いいって言われているから」

後ろから目白が新橋に声をかけた。

「でも、アレはやりすぎじゃ・・・」

「いいのよ、彼はアレぐらいの方が」

満面の笑みを浮かべて目白は言った。

「・・・でも、見ているだけもつまんないわね」

「え?」

目白の発言に新橋は疑問を感じた。

すると、目白は自分の武器である『刹那の夢』を具現化させ、拳を覆った。

「私も少し・・・相手にしてくるわ!」

「ちょ、ちょっと目白さん!?」

新橋の制止を聞かず、目白は既に池袋が圧倒している戦況に文字通り殴りこんだ。
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第66話『制御不能状態』

「よし」

「こんなものね」

呟く池袋と目白の周りには、倒れた異星人達が転がっていた。

既に、行動可能な異星人は残っていない。

そんな状況を見て新橋は

「・・・・・」

ただそれを見ているしかなかった。

新橋が参戦していても足手まといにしかならなかったであろう。

その気持ちが、新橋の心境を尚更複雑にさせた。

「・・・お?」

池袋が何かに気付いたらしく、自分で破壊した壁に近づいた。

「どうしたの?」

「・・・見てくださいよ、これ」

池袋が見つけたもの、それは・・・

「隠し階段?」

「おそらく、これが本命。この工場はその隠れ蓑でしょう」

そういいながら池袋はそれを降りようとした。

「お、おい池袋?」

それを新橋は止めようとした。

「調査だぞ?なら進まなきゃダメだろ?」

「そういうこと、行きましょ」

意見が重なった2人はそのまま進んだ。

「・・・あぁ、もう!」

新橋もそれに仕方なく進んだ。



「・・・大したことなかったな」

周りを見回しながら、犬彦先生は呟いた。

そこには上半身と下半身を見事に分断された異星人達が転がっていた。

ここまでの状況を作り出した当の本人は息一つ切らしていなかった。

「さて、あいつらを追っかけ・・・」

そう動こうとした時、更に大勢の異星人が通路の先から現れ、犬彦先生を囲んだ。

「・・・そう簡単には行かせてくれねえらしいな」

そう一言放った後、再び犬彦先生は戦闘に入った。



「シュート!」

目黒が『ジャンクション』から放った光線は向かってくる異星人達に突き進んだ。

しかし、それは避けられ、当たることはなかった。

「目黒、集中力が切れているぞ。足元だけでなく手元でも固定しろ」

照先生が目黒の射撃に指導を行った。

「は・・・ハイ!」

目黒も返事はするも、既に息は切れ切れであった。

照先生も2つある砲の1つをブースターとして活用し高速で移動しながら、もう1つの砲で砲撃を行った。

その砲撃は正確で、確実に敵を撃破していったが、その数は中々減らないでいた。

「・・・ちょっとマズイかな」

照先生からも、少し焦りの色が出始めていた。

「な・・・なんとかしないと・・・」

目黒もその状況に危機感を覚えていた。

それでもどうにかしようと再び『ジャンクション』を握った時であった。

ピーーーーーッ

目黒の認証リストから音が出ると共に、モニター画面に文字が浮かんでいた。

その文字を目黒は確認したが、意味を理解することが出来なかった。

浮かんでいた文字は、この文字であった。

『WEAPON GENOCIDE MODE CALL OK!』

目黒に分かったのは、何か『ジャンクション』の能力が使用可能になったのだろうということだけだった。

今の状況を打破するにはこれしかない、そう考えた目黒は迷わず使用した。

「『ジャンクション』・・・『ジェノサイドモード』起動!」

そう言った瞬間、『ジャンクション』の砲口に通常以上のエネルギーが集まりだした。

「な!?目黒、それはよせ!」

それを聞いて照先生は止めようとしたが、既に遅かった。

「シュート!!」

叫んだ勢いのまま『ジャンクション』の引き金は絞られた。

すると、砲口からはそれ通常以上の威力の光線が放たれた。

その光線は、異星人の集団に直撃。

半数近くの異星人たちがそれに巻き込まれ、戦闘不能に陥った。

更にその上、この光景に異星人たちは動揺を見せていた。

流れが2人に向いたのは、言うまでもなかった。

「こ・・・これでどうにか・・・」

そう呟くと共に、目黒の意識は途絶えた。



「・・・何だ、ここは?」

階段を降りてから開口一番、新橋が言った。

「・・・これは予想外ね」

目白もそれに続いた。

池袋は口には出さなかった。

だが、心の中では反応を見せていた。

(・・・やっぱりな)

第67話『拳と盾』

3人の目の前には、いくつものガラス製の大きな筒状のケースが並んでいた。

しかも、全て薄緑色の液体が満たされている。

「何かの実験施設か?」

率直な予測を新橋は立てた。

「・・・おそらくそうでしょうね。でも何の・・・?」

目白もそれに同意しながら、そのケースを調べようとした。

その時だった。

目白に何かが高速で飛び掛ってきた。

「危ない!」

それにいち早く気付いた新橋は『蒼天の剣』を具現化させ、その2つの間に割って入り襲撃を阻

止した。

この新橋の行動によって動きを止められた物体、それは・・・

「・・・人?」

紛れも無い人間だった。

しかし、その様子は異常であった。

虚ろな目、荒げる息、そして何より左手首に付けられた認証リストがそれを物語っていた。

「・・・強化か」

それを意味するかのように、認証リストの液晶が赤くなっていた。

と、次第に相手を抑える『蒼天の剣』の剣先が、新橋の意思とは違う方向を向き始めた。

相手のパワーの方が、新橋を上回っていたからだ。

「ガァァァッ!」

そしてついに、相手の叫び声と共に新橋は壁まで吹き飛ばされた。

「グァ!」

激突した痛みから、苦悶の声をあげる新橋に相手は追い討ちをかけようと襲い掛かった。

ガァン!

だがそれは、池袋の『自由の代償』で止められ、更にその隙を逃さぬよう

「ハァッ!」

目白が横から拳を見舞った。

そこから放たれた衝撃が相手の腰に走り、本体ごと吹き飛ばした。

「新橋、大丈夫か?」

「あ、あぁ・・・」

『蒼天の剣』を杖にして立ち上がりながら、新橋は答えた。

「・・・池袋君、アレを使いなさい」

目白が突然そう言った。

「・・・いつから知っていたんですか?」

「最初から。今までのがあなたの全力とは、とても思えないもの」

「・・・やはり敵いませんね。いいですよ」

一瞬笑みを浮かべた後、池袋は目白と共に真剣な表情に変えた。

そして次の瞬間。

キィィィィン

2人の瞳の奥で、新橋には聞こえない音が響いた。

まず池袋が『自由の代償』を先ほどと同じように投げ飛ばした。

横に回転しながらそれは相手に向かっていき、そして見事に命中。

だが、それだけでは終わらなかった。

相手に当たったことにより跳ね返ったそれを池袋はキャッチし、それで

「タァッ!」

攻撃をガードするときと同じ持ち方にし、その体勢で体当たりを行った。

更にその一瞬の間に相手の後ろ側に回った目白が

「ハッ!」

背中に向かって拳を放った。

そこから放たれた衝撃は反対側にある『自由の代償』のおかげで、全て伝わった。

「ガ・・・ア・・・」

強化されているとはいえ、流石に痛みを感じたのだろう。

それを声で出しながらも、2人を突き放して、一旦体勢を整えようとした。

だが、その間に

「ハァァァァ!!」

新橋が巨大化させた『蒼天の剣』を持って跳躍していた。

あとはそれを振り下ろせばいいだけだった。

その直前、目白は相手の腹部で何か赤く光るものを見つけた。

(アレは・・・まさか!?)

「新橋君、ダメ!」

しかし、目白の制止は間に合わなかった。

振り下ろされた『蒼天の剣』は相手の腕でガードされるも、その衝撃は十分に伝わった。

「ア・・・ァ・・・」

そして沈黙、これで全てが終わったかのように見えた。

だが次の瞬間、相手の腹部から溢れんばかりの赤い光が発せられた。

「な、何だ!?」

驚きながら新橋はそこから後ろへと距離を取った。

「マズイわ・・・まさか体内に『サイクロプス』埋め込んでいるなんて」

「え!?」

広範囲マイクロ波発生型大量破壊装置『サイクロプス』。

これが発動してしまうと、周囲20~30kmは焼け野原になってしまうと言われている。

「こいつを・・・どうにかしないとな」

池袋が呟いた。

今から表にいるメンバーに伝えるのはもちろん、効果範囲内の住人への避難もしなくてはいけな

い。

それを短時間で行うなど、到底不可能である。

「・・・池袋君、新橋君、ちょっといいかな」

急に目白は2人を呼び寄せた。

第68話『姉妹の伝わり』

「何ですか?」

状況が状況だけに、新橋と池袋はすぐに駆け寄った。

すると突然、目白は2人の胸に手を当てた。

その瞬間、『刹那の夢』から衝撃が放たれ、それを2人はまともに受けた。

「ウワッ!?」

2人はそのまま先ほど降りてきた階段まで吹き飛ばされた。

「イテテテ・・・」

「め、目白さん、何を・・・」

と、新橋がすぐ立ち上がって戻ろうとした。

だが、入り口の手前でまたしても吹き飛ばされた。

「・・・『プラネイトディフェンサー改』?」

目白はいつの間にか、部屋の隅にそれぞれ遠隔操作型エネルギー防御壁『プラネイトディフェンサー改』を設置、作動させ、部屋全体をエ

ネルギーの壁で囲んでいた。

更に

「ウェポンチェンジ・・・」

目白は武器を変化させた。

両前腕部を全て覆った『両腕部Iフィールド発生器』を。

「これで被害は最小限に食い止められるわ」

2つのフィールドによる『サイクロプス』の抑制。

それが目白の狙いだった。

「そんな・・・そんなことしたら目白さんも無事じゃ・・・」

「・・・そうね」

「そうねって・・・なんで」

そこまで言ったところで新橋は突然気絶した。

後ろから池袋が手刀で新橋の首を叩いたからだ。

「・・・アリガト、池袋君」

「いえ、目白さんのことになるとコイツ、冷静じゃいられないですし、それに・・・」

「それに?」

「・・・悪いですが、目白さんについて少し調べさせていただきました」

その池袋の発言に、目白は反応を見せた。

「・・・ということは知っているのね、私の体のこと」

「ええ、すいません」

「いいのよ、いつかバレることだったし」

そう言って目白は服の右袖に手をかけ、そのまま引きちぎった。

するとそこには、とても人の肌とは思えないほど黒く変色した目白の肩が露わになった。

「・・・やはり目白さん、あなたは『E計画』の・・・」

「えぇ、被験者だったわ。とある人のおかげで抜け出すことは出来たけど、その人によるともうあと1年生きられないみたい・・・」

淡々と語る目白だが、その瞳には寂しさが滲み出ていた。

「・・・だからその方法を思いついたと?」

「えぇ、どうせ消える命なら、少しでも有意義に使いたいしね」

「けど・・・それを聞いてコイツと目黒はどう言いますかね」

池袋はそう言いながら新橋を抱え上げた。

「新橋君にはゴメンとだけ伝えておいて。目黒には直接伝えるから」

「・・・分かりました。じゃあ最後に、2点だけ聞かせてください」

「え?」



「・・・たく、あいつらどこに行った?」

やっと集団を追い払った犬彦先生であったが、先に行った3人を見つけられずに迷っていた。

「あ、犬彦先生」

と、池袋が新橋を抱えながら隠し階段から出てきた。

「お、池袋・・・目白はどうした?」

「それよりも、あと少しで『サイクロプス』が発動します、退却を」

「何?ところで目白は?」

『サイクロプス』の存在に驚きつつも、目白の不在に犬彦先生は気付いた。

「目白さんは・・・」

「・・・そうか、自分から決めたか」

「え?」

「いや、何でもない。行くぞ」

そう言い放ってから犬彦先生は走り出した。

それを見た後、池袋は

(お2人とも、出番です)

『プライベートメッセージ機能』で通信を行った。



「・・・相変わらずの数だな」

気を失った目黒の分まで照先生は異星人に対して攻撃を行っていた。

先ほどに比べ数は大分減っているものの、1人で対応するには多かった。

「・・・仕方ない、一気に決めるか」

そう呟いた後、照先生は砲を2つとも構えた。

「『アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲』、JS・・・」

と『JSAモード』の使用宣言しようとしたその時だった。

左手前方からという、照先生が全く想像していなかった方向から光線が異星人の集団に直撃。

照先生の手に負えないほどの数であった異星人が、数えられるほどの数にまで減った。

更に

「ハァァッ!」

右手前方から叫び声と共にワイヤーで繋がった何かが飛んできた。

その何かは異星人1体をガッチリ掴み、そしてそれに引き寄せられるかのように人が飛んできた。

その人はそのまま異星人と格闘戦に突入、次々となぎ倒していった。

「大丈夫ですか?」

呆然としている照先生に、おそらく先ほどの光線を放ったであろう砲を持った男が現れた。

「あなたは?」

「私は政府軍東京支部緊急特務部隊所属の雷電、彼は同じく悠矢です」

「・・・どうしたんですか、急に?」

多少の不信感があるのだろう、警戒しながら照先生は聞いた。

「あそこから『サイクロプス』反応が検知されました」

「何?」

「フィールドで装置を囲んでいるようなので被害は最小限ですが、ここは危険です。撤退をお願いします」

「わ、分かりました」

そう言って照先生は横になっている目黒を背負った。

「・・・う・・・」

それで目黒は目覚めた。

「目黒、起きたか、だが今はそれどころじゃない、しっかり掴まってろ」

「は、はい・・・」

それだけ伝えると、照先生は走り出した。

(・・・目黒)

突然、目黒に『プライベートメッセージ機能』による目白の声が聞こえてきた。

(・・・お姉ちゃん?)

普段は目白をそのまま姓で呼んでいる目黒だが、孤児院や2人だけでいるときは基本的にこのように呼んでいた。

(最後に・・・最後に言っておきたいことがあるの)

(え?最後?)

(あの時・・・前の孤児院から逃げ出したときからずっと思っていたけど、ずっと言えなかったことを、ね)

(ど・・・どういうこと?)

(・・・たとえ、たとえ血は繋がっていなくても、あなたは私の妹だわ。それだけは忘れないで)

この言葉が目白に伝わりきった次の瞬間、廃工場が赤い光に包まれた。

「お、お姉ちゃーーーーーん!!」



その後、廃工場は完全に消滅。

しかし、撤退の連絡がうまく伝わったこともあり、被害は全くなかった。

目白の犠牲を除いて、は。

第69話『決別の時』

廃工場が壊滅して3日が経った。

その一件から初の定例会議のため、放課後の生徒会室にメンバーが集まっていた。

しかし、廃工場に参加したメンバーは誰もいなかった。

会長である牙津も、照先生と犬彦先生と共に現場検証のため欠席していた。

それに加え、他のメンバーも全員浮かない表情でいた。

「・・・大崎、池袋と新橋、今日見たか?」

その空気を振り払うかのように神田が口を開いた。

「・・・イヤ、朝から見ていない」

「そうか・・・目黒を今日見たやつ、いないか?」

神田のこの問いに、全員首を横に振る形で返答した。

「・・・そうか。もっとも、無理はないか」

この後に神田が言葉を続けることはなかった。

「今は・・・そっとしておいてあげましょう。そのうちきっと来るって」

大塚がそう言った、その時であった。

「こんにちはー」

そう言って生徒会室に入ってきたのは、まさに話題に上がっていた目黒だった。

「め、目黒・・・大丈夫なの?」

流石に予想もしなかったからであろう、田町がそう聞いた。

「はい、ご心配かけてすいませんでした」

いつもの笑顔のまま目黒は頭を下げた。

「・・・本当に大丈夫なのか?」

品川が疑問を浮かべながらそう聞いた。

「はい、最初は立ち直れそうにもなかったんですけど・・・」

「けど?」

「ウチの小さい子達は目白さんが大好きだったから、きっとそれ以上に寂しい思いをしているは

ずですし、

これ以上子供達にそんな思いをさせちゃいけないって。だから、私だけでも・・・」

そう言っている目黒の目が、次第に涙で潤んできた。

「・・・目黒、無理しなくていいんだよ?」

「え?」

大塚の一言に目黒が反応した。

「私達は・・・目黒がいつも頑張って、努力して、たまにそれで自分自身傷つけてるの知ってい

るから」

「そんな、そんなこと」

目黒の一言を遮るように、田町が立ち上がって抱きしめた。

「だからさ、ここでは強がらずに私達を頼って・・・ね?」

「・・・は・・・はい・・・ウワァァァァァァァ!」

ついに目黒はそのまま泣き崩れてしまった。

その生徒会室のすぐ外では、蝶子先生が途中から様子を見ていた。

「・・・今は言いにくいな、これは」

そう呟いた蝶子先生の手には、1つの封筒が握られていた。



『百花高校』近くの河川敷。

そこに、昼近くになって登校しようとする池袋の前に、

「また重役出勤か?」

と皮肉を言いながら新橋が突然立ちふさがっていた。

「・・・そういうお前こそ、この時間に何でここにいるんだ?授業もう始まっているだろ?」

「・・・・・」

「それに、ここ最近お前アパート帰ってきてないが、どうしたんだ?」

質問を立て続けにする池袋に対して、新橋は

「さっき退学届けを出してきた」

突如そう言い放った。

「・・・どういうことだ?」

「こういうことだよ」

新橋はそう言ってから左腕に付けているリストを見せた。

それは、『百花高校』で支給されるものではない上に、液晶が赤く光っていた。

「強化の危険性は授業で習ったろ?忘れたのか?」

「あぁ、覚えているさ。だが、それよりも安全で確実な強化があるの、お前は知ってるだろ?」

「・・・『E計画』か」

「あぁ。調べていて知ったよ。お前、既にこの件で絡んでいたんだな」

「だったら何だ?」

今まで見せたことのない、不機嫌な顔を池袋は見せた。

「・・・お前とはしっかりと決着をつけたいところだった」

すると新橋は『蒼天の剣』を具現化させた。

「・・・この場で戦えって言いたいのか?」

「言わなくても、そうさせてやるよ」

「・・・言われなくても、やるつもりさ」

すると池袋はすぐさま認証リストに『EB-ID』を差込み、ログインした。

「だが、後悔するなよ・・・?」

その一言と同時に、戦闘が始まった。



「ガ・・・ハ・・・」

僅か5分もしないうちに、勝敗は決した。

新橋が自力で立てなくなるほどにダメージを負う形で。

一方の池袋は、全くの無傷だった。

「・・・少し、反省しておけ。まだ引き返すことは出来るんだからな」

その一言を放ってから、池袋はその場から歩き出した。

「ま・・・待て・・・」

そう言って後を追おうとする新橋だったが、それは叶わなかった。



そして、2人は廃ビルで再会するまで顔を合わせることはなかった。
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